Heの電離の反応速度係数を求める
反応速度係数とは
プラズマ中で、電子が He 原子に衝突してHe 原子を電離させる場合を考える。 (電子-原子 の衝突だが、電子-イオン、イオン-イオンなどでも考え方は同じ)
- 電子 : 電子温度 $T_e$ ($eV$)、密度 $N_e$ ($m^{-3}$)
- He原子 : 温度 $T_{\mathrm{He}}$ ($eV$)、密度 $N_{\mathrm{He}}$ ($m^{-3}$)
ここで、単位時間・体積あたりに生じる反応の回数を反応率 $S$ ($m^{-3}/s$) という。
もちろん、両者の密度が高いほど反応率は上がる ($ S \propto N_e \times N_{\mathrm{He}} $)
一方で、温度 (=エネルギー) については、反応しやすい温度と反応しにくい温度があり、温度で平均した反応のしやすさを反応速度係数 $R$ ($m^3/s$) という。
反応率は $R$ を用いて、$ S = R N_e N_{\mathrm{He}} $ となる。
$R$ は両者の相対速度と断面積(ある温度における衝突の起こりやすさ)から計算できる。
今回の場合、He原子よりも電子のほうが圧倒的に軽いため、相対速度は電子速度と近似できる。
反応速度係数 $R$ の計算方法
- 反応の断面積 $\sigma (v)$ を用意する
- $\sigma$ の単位は $m^2$
- 電子、原子ともにマクスウェル分布に従っているとして、EEDF : $f(v)$を用意する
- 積分値が1になるように密度で規格化しておく
- 数 $eV$ の電子温度を仮定して計算する速度テーブルは $200 eV$ 相当までとする
- 以下の式で $R$ を計算する
- $v$ は電子の衝突直前の速度。
$$ R = \langle \sigma v \rangle = \int^{\infty}_{0} \sigma(v) v f(v) dv $$
具体的な計算
まずは 電子衝突によるHe 原子の電離の断面積を調達してくる。
正確な値は文献を探す必要があるが、一旦次のデータを補完することとする。
$E (eV)$ | $\sigma (\times 10^{-20} m^2)$ |
---|---|
$0$ | $0$ |
$25$ | $0$ |
$50$ | $0.25$ |
$75$ | $0.35$ |
$100$ | $0.35$ |
$200$ | $0.35$ |
今回は $10^{-4} eV$ から $200eV$ まで $0.1eV$ ずつ合計 $2001$の速度データを用意した。
線形補完した断面積は次の通り。
次に $1eV$ から $30eV$ まで $1eV$ ずつ温度を変えてマクスウェル分布 $f(v)$ を計算し、それぞれの $f(v)$ に対して $R$ を計算する。
ソースコード
PROGRAM test
IMPLICIT NONE
REAL(8) :: E(0:2000) ! エネルギーテーブル : eV
REAL(8) :: v(0:2000) ! 熱速度(計算用) : m/s
REAL(8) :: EEDF(0:2000) ! EEDF : f(e)
REAL(8) :: sig(0:2000) ! 断面積テーブル
REAL(8) :: R = 0.d0 ! 反応速度係数
REAL(8) :: q = 1.6d-19 !
REAL(8) :: pi = 3.14d0 !
REAL(8) :: Ne = 1.d0, Te = 1.d0 !
REAL(8) :: me = 9.1d-31 !
REAL(8) :: dummy !
INTEGER :: i, j !
! === ENERGY ===
E(0) = 1d-4 ! 1d-4 eV から
DO i = 1, 2000
E(i) = E(i-1) + 0.1d0 ! 0.1 eVずつ
v(i) = sqrt( 2.d0*E(i)*q/me ) ! 熱速度
END DO
! === SIG : 断面積の読み込み ===
OPEN( UNIT=100, FILE="sigHe.100", STATUS="OLD" )
DO i = 0, 2000
READ(100,*) dummy, sig(i)
END DO
CLOSE(100)
! === MAXWELL 生成・計算 ===
DO j = 1, 30
R = 0.d0
DO i = 0, 2000
EEDF(i) = pi/sqrt(2.d0)*Ne*(2.d0/(pi*Te))**1.5d0 ! ブログ参照
EEDF(i) = EEDF(i) * sqrt(E(i))*exp(-E(i)/Te) ! eV-Maxwell
EEDF(i) = EEDF(i) * me * v(i) / q ! mps-Maxwell
IF(i/=2000) R = R + sig(i) * v(i) * EEDF(i) * (v(i+1)-v(i))
END DO
WRITE(101,*) Te, R
Te = Te + 1.d0
END DO
END PROGRAM test
コンパイル・実行
ifort test.f90
./a.out
sigHe.dat は線形補間して用意しておく。
計算結果
計算した結果は以下の通り。
例えば電子温度 $10eV$ では $R = 7.2 \times 10^{-16}$ $m^3/s $ である。
電子密度 $N_e = 10^{16} m^{-3}$、He原子の密度を $N_{\mathrm{He}} = 10^{21} m^{-3}$ とすると、
反応率 $ S = 7.2 \times 10^{21} $ $m^{-3}/s $ であり、単位時間・体積当りこの個数程度のHeイオンが生じていることになる。
0 件のコメント:
コメントを投稿